ぽってりとした厚みのある乳白色の生地に映えるコバルトブルーの伝統的なデザイン―――。世界の他の陶磁器とは一線を画す特徴を持つポーランド陶器は、産地の名前を取って、ボレスワビェツ陶器と呼ばれています。ドイツ国境からボレスワビェツに続く道沿いには、たくさんの陶器メーカーが建ち並びます。『セラミカ・アルティスティッチナ』社は、この地を代表する陶器メーカーのひとつ。経営者も含め従業員の7割が女性で、丁寧なモノづくりを続けています。伝統的な絵柄からモダンなパターンまで、『セラミカ・アルティスティッチナ』の絵付けは群を抜いて個性的。それは、熟練した職人を多く擁する『セラミカ・アルティスティッチナ』の技術力の高さによって支えられ、現在でも、多彩な新柄が創出されています。
ポーランド南西部に位置する人口4万人の小さな街、ボレスワビェツ。街に流れるボーベル河畔から良質な陶土が産出されるこの地では、中世から陶器作りが行われていたと言われています。初期の陶器は、貯蔵用コンテナーやチーズおろし、オーブン型など、そのほとんどが農場や台所で使用するために作られたと言われますが、今日残っているものはごくわずかです。ボヘミア王国、プロイセン王国、ドイツ、と現在のボレスワビェツを有する国家は戦火とともに変遷してきました。その過酷な歴史の中、現存するボレスワビェツの歴史的陶器は18世紀前半に作られたものが中心になります。
世界の他の陶磁器とは一線を画す特徴をもつポーランド陶器は、産地の名前をとってボレスワビェツ陶器とも呼ばれています。ボレスワビェツ近郊に採掘される陶土を使い、石膏型から形を成型します。成型されたものは手作業で表面を滑らかにしたり、取手をつけたりと、ひとつひとつが職人の手作業で進められていきます。水玉模様のようにみえるピーコックアイ(クジャクの羽根)やドットやフラワーモチーフなど、絵柄のひとつひとつが手作業で描かれています。同じ商品でも少しずつ形がちがうのも、ハンドメイドだからこそです。型職人、絵付職人などそれぞれの職人の手にかかった商品は、全て手作業で行なわれているという意味を大切にしているので、商品の裏側に“HAND MADE IN POLAND”のスタンプと絵付職人のイニシャルを必ず押しています。
『セラミカ』の特徴的な柄は、海綿を小さく切ったスタンプに絵具を付けて、そのひとつひとつを手で押して描かれます。手作業の工程の中でも、最も丁寧に行なわれる行程です。絵筆やステンシルなどと組み合わせる場合もあります。絵付けは、シンプルなものなら、20~30分、複雑なものでは数時間かかると言われています。熟練した絵付職人による、より複雑な絵柄は「ユニカット」シリーズと呼ばれ、製品の裏側に職人の名前が手書きされます。それはどれも国内外より高い評価を得ています。また、日常使いできる多様なフォルムは種類がとても豊富なことも大きな特徴です。セラミカ・アルティスティッチナ社はテーブルウエア、オーブンウエアなどの他にフラワーベースやオーナメントなどのインテリアアイテムを含めると1000アイテム以上のバリエーションを所有しています。
ボレスワビェツ近郊で採掘される陶土は、自然採掘による土(天然陶土)によって作られています。焼き上がりをみるとわかる様に、ボレスワビェツ陶器の素地は磁器に見られる透明感のある白さではなく、クリーム色で少々灰がかっている乳白色です。これは土の成分上、鉄分の量が一般に磁器と呼ばれているものよりも多いからなのです。この天然陶土はカオリンという鉱物を豊富に含んでいます。カオリンを含む粘土は高温(1200~1300℃)で焼き上げることにより白色化し、熱に強く丈夫になります。陶器よりもガラス質を多く含んでいるため、焼きあがりは固く引き締まり、吸水性の少ない丈夫な食器に仕上がります。そのため、『セラミカ』の食器はオーブン、電子レンジ、食洗機にも安心して使える、日常使いのテーブルウエアなのです。
『セラミカ』の最大の特色は、やはり多種多様なパターン=絵柄です。コバルトブルーで描かれた「ピーコックアイ(クジャクの羽根の模様)」や「モスキート(蚊のようにみえる模様の入ったデザイン)」ドットで形成される小さな花柄模様など、中世の頃から受け継がれた伝統的な柄もありますが、大半はオリジナルにデザイナーが生み出したものです。伝統的な工法とパターンを継承しつつ、色褪せない個性的なデザインを生み出すセラミカ・アルティスティッチナ社のデザイナーによって生まれる芸術的なラインナップは、現在では2000柄以上になります。そんなデザインのベースになっているものに、ポーランドの自然があります。日本では北海道によく似た気候のポーランドの豊かな自然の中から生まれるデザインは、自然と花や草などのモチーフが多く使われます。愛らしくかわいい絵柄の描かれた『セラミカ』は食卓に温もりを与えてくれます。